横浜地方裁判所 平成7年(ワ)2328号 判決 1996年10月02日
横浜市旭区柏町五八番地の一
原告
河野禮通
東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
被告
国
右代表者法務大臣
長尾立子
右指定代理人
小暮輝信
渡部義雄
田部井敏雄
加藤正一
池上照代
中澤彰
木村忠夫
上田幸穂
山本善春
横浜市旭区二俣川一丁目二番地一ライオンズステーションプラザ二俣川三〇二号
被告
渡部芳雄
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一原告の請求
一 被告国は、原告に対し、金一〇九五万円及びこれに対する平成五年一〇月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告渡部芳雄は、原告に対し、金九五万円及びこれに対する平成五年一〇月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1 原告は、保土ヶ谷税務署長(以下「税務署長」という。)が行った原告の平成二年分の所得税の減額更正処分、平成三年分の所得税額の決定等の課税処分とこれに先立つ税務相談等に違法があったとして、平成五年四月一六日被告国を相手方として1095万円の損害賠償を請求する訴訟(横浜地方裁判所平成五年(ワ)第一三一六号損害賠償請求事件。以下「前訴」という。)を提起した。
2 被告国の公務員である石倉正光大蔵事務官(以下「石倉事務官」という。)は、東京国税局課税第一部国税訟務官室に配属された大蔵事務官であり、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律二条二項に基づく被告国の指定代理人として、前訴の訴訟追行に携わっていた。
3 石倉事務官は、前訴の訴訟追行の準備のため、平成五年一〇月八日、司法書士である被告渡部芳雄(以下「被告渡部」という。)に対し、前訴において平成二年の譲渡所得であるか平成三年の譲渡所得であるかが争われた原告の訴外長田恵美子への不動産譲渡についての登記手続事務につき被告渡部が受領した報酬等に関して、同人が平成二年一二月七日付けで発行した金二三万七五〇〇円の領収書(以下「本件領収書」という。)の内容事項について電話で質問をし、被告渡部から回答を得た(以下、この質問と回答を「本件聴取」という。)。
4 石倉事務官は、本件聴取の結果に基づいて別紙記載のとおりの電話聴取書(以下「本件聴取書」という。)を作成し、右文書を前訴における被告国の書証(乙第一三号証)として裁判所に提出した。
5 横浜地方裁判所は、平成六年二月一日前訴について原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
二 原告の主張
1 被告国の責任
(一) 質問検査権の主体
石倉事務官の本件聴取は、所得税法二三四条一項三号所定の質問検査権に基づいてされたものであるところ、国税訟務官や国税訟務官室の大蔵事務官は、質問検査権の主体には該当しないから、本件聴取は権限なくしてされた違法な税務調査であり、本件聴取書は違法に収集された証拠である。
(二) 平成二年分の所得税に関する調査資料の収集
仮に石倉事務官が質問検査権の主体に該当するとしても、本件聴取における質問事項は被告渡部が平成二年一二月七日付けで発行した領収書に関するものであるが、このような質問検査権が許容されるのは同年分の課税処分等に関する行政訴訟が提起された後であるべきである。民事訴訟(国家賠償請求事件)である前訴の訴訟追行のために、石倉事務官が質問検査権を行使して同年分の所得税に関する調査を行って資料を収集するのは違法である。
(三) 被告渡部に対する違法教唆及び幇助等
石倉事務官は、被告渡部に右のような違法な調査に対する協力を求め、被告渡部もこれに応じて違法な本件聴取が行われたのである。また、石倉事務官は、被告渡部において本件回答をすることが後記2(一)及び(二)のとおり司法書士法所定の義務に違反することを知りながら、被告渡部をして違法に右義務違反行為を行わしめるよう教唆又は幇助をしたものであって、被告渡部と共同不法行為の関係に立つ。
(四) 石倉事務官の違法な領収書取得
本件聴取を行うに際しては、石倉事務官は本件領収書の原本又は写しを所持していたものと考えられるが、本件領収書は平成二年一二月七日に被告渡部から原告に発行されたものであり、原告の事務所から外部に出た事実はない。したがって、保土ヶ谷税務署の税務調査の際に盗まれたとしか考えられず、石倉事務官は違法に本件領収書の原本又は写しを入手している。
(五) 以上によれば、被告国は、石倉事務官の故意又は過失に基づく違法な公権力の行使によって生じた原告の後記3(一)の損害について国家賠償法一条一項による責任を負う。
2 被告渡部の責任
(一) 司法書士法一一条違反
被告渡部は、正当な事由がある場合でなければ、司法書士として業務上取り扱った事件について知ることのできた事実を他に漏らしてはならないという秘密保持義務(同法一一条)を負っていたにもかかわらず、右義務に違反して本件聴取に応じたのは違法である。
(二) 同法一〇条違反
被告渡部は、司法書士として業務の範囲を超えて他人間の訴訟その他の事件に関与してはならない義務(同法一〇条)を負っていたにもかかわらず、右義務に違反し、本件聴取書が前訴において被告国の証拠方法として提出されることを認識していながら、本件聴取に応じたのは違法である。
(三) 以上によれば、被告渡部は、司法書士法上の右各義務に違反する違法な行為により、原告に後記3(二)の損害を負わせたものであり、原告に対して不法行為責任を負う。
3 原告の損害
(一) 石倉事務官の行為によって生じた損害 合計一〇九五万円
原告は、本件聴取書が被告国の証拠方法として提出されなければ前訴において敗訴することはなかったのであるから、石倉事務官の右不法行為により、前訴で請求した損害金一〇〇〇万円と慰謝料九五万円の合計一〇九五万円の損害を被っている。
(二) 被告渡部の行為によって生じた損害 九五万円
原告は、被告渡部の行為によって著しい精神的苦痛を被ったが、右苦痛に対する慰謝料として九五万円が相当である。
4 よって、原告は、被告国に対する国家賠償法一条一項による損害賠償請求として合計一〇九五万円、被告渡部に対する不法行為による損害賠償請求として九五万円並びに右各金員に対する不法行為の日である平成五年一〇月八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
三 被告国の主張
1 質問検査権の主体
国税訟務官及び国税訟務官室の大蔵事務官は、所得税法二三四条一項所定の「国税局の当該職員」に該当するから、質問検査権の主体となりうる。
2 平成二年分の所得税に関する調査資料の収集
質問検査権は、同項に規定する「所得税に関する調査について必要があるとき」においては、調査の種類、目的及び時期等を問わず行使することができるものであるから、前訴のように所得税課税処分等の違法を理由とする損害賠償(国家賠償)請求訴訟のために、その係属中に質問調査を行うことも何ら違法ではない。
3 被告渡部に対する違法教唆及び幇助等
(一) 司法書士法一一条所定の義務違反
本件聴取書は、石倉事務官において電話のやり取りの内容を整理要約して作成したものであり、被告渡部が本件聴取において実際に回答したのは、登録免許税と司法書士の報酬に関する部分だけである。これは納税額と同被告自らの収入金額に係る事実に過ぎないのであるから、司法書士の業務上知り得た秘密には該当しない。
(二) 同法一〇条所定の義務違反
同法一〇条にいう「他人間の訴訟への関与」とは、業務として代理人に類似する行為を行うなど訴訟に直接関与する場合をいうと解される。被告渡部は石倉事務官の質問検査権の行使に対して回答すべき責任義務を果たしたに過ぎないのであるから、他人間の訴訟に関与したとはいえない。
4 以上によれば、石倉事務官は本件聴取に当たり質問検査権を適法に行使して質問し、被告渡部は右質問に対して回答すべき義務を果たしたに過ぎないから何ら不法行為を構成するものではない。
四 被告渡部の主張
1 石倉事務官が原告の資料を探り出す目的で被告渡部に協力を求めた事実はなく、右事務官は、税務調査の権限行使であると告げて本件聴取を行ったものであり、被告渡部がこれに応じたことは何ら違法ではない。
2 司法書士法一一条所定の義務違反
被告渡部が実際に本件聴取において回答したのは、登録免許税と司法書士の報酬に関する部分だけであって、右部分のうち登録免許税の税額は登録免許税法に法定されているし、司法書士の報酬については司法書士会の報酬規定に明示されているから、これらは司法書士の業務上知り得た秘密には該当しない。
3 同法一〇条所定の義務違反
被告渡部は、本件聴取に当たり石倉事務官の質問に対して回答しただけであり、石倉事務官がその後右聴取の内容を要約整理して作成した本件聴取書を前訴における被告国の書証として裁判所に提出したとしても、これをもって被告渡部が他人間の訴訟に関与したことにはならない。
4 以上によれば、被告渡部の行為は何ら不法行為を構成するものではない。
五 争点
1 国税訟務官室の大蔵事務官が質問検査権の主体となるか。
2 国税訟務官室の大蔵事務官は、所得税に関する課税処分等に関する行政訴訟が提起される前に、民事訴訟の追行のために訴訟外で質問検査権を行使して所得税に関する課税資料を収集できるか。
3 被告渡部が本件聴取において石倉事務官の質問に回答したことが司法書士法一一条所定の秘密保持義務違反に該当するか。
4 被告渡部が本件聴取において石倉事務官の質問の回答したことが司法書士法一〇条の禁止する他人間の訴訟に関与したことに該当するか。
5 その他、本件聴取に違法があるか。
6 原告の損害
第三争点に対する判断
一 争点1について
所得税法二三四条一項は、「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、」同項一号から三号までに掲げる者に「質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。」と規定し、所得税に関する質問検査権の主体が「国税庁、国税局又は税務署の当該職員」であることを明らかにしているが、右の「当該職員」には、大蔵省組織規程一二八条一項、二項により各国税局課税部に置かれる国税訟務官と国税訟務官室の職員を含むものと解される。
すなわち、所得税法二三四条一項の文理からこれを否定することは到底できないし、また、実質的に見ても国税訟務官と国税訟務官室は、内国税に係る訴訟に関する事務を処理するものと定められ(右組織規程一二八条一項、三項)、各税務署長の行う課税処分等に関して訴訟が生じた後に、その訴訟に関する事務の処理をその職務とするものであるが、そもそも、右の質問検査権は、脱税を防止するなど国の課税権の適正な行使のために前記当該職員に与えられた権限であり、その趣旨に照らしてみれば、必ずしも原処分のためだけに行使すれば足りるものではなく、原処分に関して訴訟が提起された後にもなお最終的に適正な課税処置を実現するために調査の必要があるときは、更に質問検査権を行使させてその実現を図ることが右の所得税法二三四条一項の趣旨に適うことになると解されるからである。(訴訟提起後の調査の必要は、国税訟務官において良く判断できる事項である。)。
石倉事務官は、前記のとおり、東京国税局課税第一部の国税訟務官室に属する大蔵事務官であるから、訴訟が提起された後にも原告に対する税務調査のために質問検査権を行使し得ることに問題はなく、この点で本件聴取に違法はない。
二 争点2について
1 原告は、本件聴取の目的は、原告が平成二年一二月七日付けで被告渡部から受領した本件領収書の内容事項であり、平成七年に原告が行政処分の取消訴訟を提起する前の平成五年一〇月八日に、民事訴訟である前訴の訴訟行為の追行のために本件聴取が行われたことは違法であるという趣旨の主張をするので検討するに、所得税法二三四条一項は、質問検査権行使の要件について「所得税に関する調査について必要があるとき」と規定しているのみで、調査の種類、目的及び時期等について何ら限定していないから、具体的な方法、目的に違法がない限り、過去の所得事項に遡って調査することも、課税処分に対する行政訴訟が提起される前に調査することも、また一般に通常民事訴訟と同種訴訟と考えられている国家賠償請求訴訟の追行のために必要であるとして調査活動を行うことも、いずれも許容されるものと解される。
2 したがって、原告が、右の一般論の範囲で石倉事務官の本件聴取の違法をいう限りでは原告の主張に理由はないが、なお、本件聴取の必要性に関して、事実関係を検討するに、前記争いのない事実に、証拠(甲一、甲四、乙一ないし乙五、丙一)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告が平成五年四月一六日に横浜地方裁判所において提起した前訴においては、原告は、昭和五四年一二月以降所有していた横浜市旭区柏町五八番一所在の土地一九〇・九八平方メートル(以下「旧土地」という。)から分筆された宅地九〇・二一平方メートル(以下「本件土地」という。)と本件土地上の建物一棟(以下「本件建物」という。)を訴外長田恵美子(以下「長田」という。)に対して代金一億六五〇〇万円で売却する旨の売買契約に係る譲渡所得が平成三年に発生したとして、租税特別措置法三五条一項所定の特別控除の適用を認めることなくされた税務署長の平成二年分についての減額更正処分と平成三年分の所得税額等の決定処分の適法性を争い、長田との間で右売買契約の外に平成二年一〇月三〇日付けで本件土地と旧土地上の木造二階建て建物(以下「旧建物」という。)を売却する旨の売買契約があるとして譲渡年を平成三年と認定した右処分の違法を主張し、その根拠として本件土地及び旧建物の所有権移転登記が平成二年一二月七日に行われている事実を主張したこと、石倉事務官は、前訴において被告国の指定代理人として訴訟追行していたが、旧建物は平成二年一一月に取り壊されているにもかかわらず、同年一二月七日に同日売買を原因として原告から長田に対する所有権移転登記が経由され、平成三年七月二六日に同年一月一〇日の取毀を原因とする滅失登記がされていることが判明したので、これらの登記の申請を誰が司法書士に依頼したかを確認する必要があると考え、前訴において原告から書証として提出されていた原告の平成二年分の所得税の確定申告書に添付されていた「譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面を手がかりにして、被告渡部が右登記申請を受任して平成二年一二月七日付けで二三万七五〇〇円の報酬等に関する本件領収書を原告に発行している事実を把握し、本件聴取を行うことになったことが認められる。
3 右の認定事実によれば、原告は、前訴において、平成二年一二月七日に本件土地と旧建物の所有権移転登記が行われたのであるから本件土地及び旧建物の譲渡年は平成二年であると主張したけれども、旧建物がすでに同年一一月に取り壊されていた事実が判明していたと認められるのであって、右主張実態に即していないのではないかと疑いが生じたのも当然であると考えられ、このような疑いがある以上、石倉事務官において、被告渡部に対して本件領収書の宛先及び内訳について質問調査をする必要があったというべきである。このようにして、本件聴取に関して調査の必要性を認めることができるから、石倉事務官の質問検査権の行使に違法性があるとはいえない。
三 争点3について
1 司法書士法一一条は、司法書士は正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた事実を他に漏らしてはならない旨規定しているが、右規定は、登記申請人等のプライバシー、営業上又は名誉若しくは信用上の秘密を保護するためのものと解される。しかし、一方では国税庁、国税局又は税務署の当該職員についても同様の守秘義務が課されており(国家公務員法一〇〇条一項)、当該職員に対する告知が当然に漏洩とはならないことにかんがみると、当該職員が司法書士に対して質問検査権を行使する場合においては、その調査が必要とされる範囲内の事項については、特別の事情のない限り、右質問に応じて回答することは司法書士法一一条所定の秘密保持義務に違反するものではないと解するのが相当である。
2 ところで、本件においては、前記争いのない事実に、証拠(甲一、乙一ないし乙三、乙五、丙一)を総合すると、石倉事務官は、平成五年一〇月初めごろ被告渡部に対し、原告の所得税に関する調査である旨を告げた上で、同被告に本件領収書の宛先及び内訳について質問したところ、被告渡部は、平成四年以前の事件の関係資料を自宅に保管していたことから右質問に即答することができなかったため、石倉事務官は、改めて同月八日午後一時四〇分ごろ被告渡部に対し、電話で再度同じ質問をしたところ、被告渡部は、領収書簿冊から本件領収書の写しを検索し、右写しに基づいて、本件領収書は原告宛に発行されたものであり、その内訳は、根抵当権の抹消登記及び所有権移転登記に関する登録免許税、報酬、閲覧及び謄写の費用及び交通費等である旨回答したが、それ以外の事項(旧建物の表示、登記上の権利者及び義務者の住所の表示、登記原因たる売買の日付等)については、石倉事務官から質問もなかったので回答しなかったこと、石倉事務官は、本件聴取後、聴取した内容(領収書の宛先及び内訳)を本件聴取書にまとめるに際して、右の登記申請の内容を特定するため、旧建物の閉鎖登記簿謄本を参考にしながら本件聴取書の「答」の欄に旧建物の表示、登記の目的及び原因、登記権利者及び義務者の住所などを記載したこと、そして、石倉事務官らは前訴において本件聴取書を被告国の書証として提出し、これに基づいて平成二年に行われた本件土地及び旧建物の所有権移転登記は買主の意思にかかわりなく原告が主導して行ったものである旨の主張を行ったことが認められる。
3 右の認定事実によれば、石倉事務官の本件領収書の宛先及び内訳についての質問に対して、被告渡部は、本件領収書は原告宛に発行されたものであり、その内訳は根抵当権の抹消登記及び所有権移転登記に関する登録免許税、報酬、閲覧及び謄写の費用及び交通費等である旨回答したにとどまり、それ以外については何ら告知していなかったことが認められる。したがって、右の特別の事情があるとはいえず、何ら右の秘密保持の義務に違反したとはいえない上、右の回答事項は専ら右被告収入金額に係る事実に過ぎないのであって、そもそも司法書士の業務上知り得た秘密には該当しないというべきである。
このようにして、被告渡部が右質問に回答したことをもって、同条の秘密保持義務に違反したことにはならず、違法はない。
四 争点4について
前記認定のとおり、被告渡部は、石倉事務官の質問調査に応じて本件領収書の宛先及び内訳について回答したにとどまるのであり、その後、石倉事務官において、同被告の回答内容を証拠とするために本件聴取書を作成し、前訴における被告国の書証として提出したからといって、右被告の回答行為が司法書士法一〇条が禁止している他人間の訴訟に関与することに当たるとはいえず、この点で違法性を認めることはできない(後述のとおり、石倉事務官と被告渡部が違法な目的の下で協力し合ったという事実を認める証拠はない。)。
五 争点5について
1 原告は、本件聴取が行われたことについては、原告に関する課税資料を探り出す目的で被告渡部に協力を申し入れ、被告渡部もこれに応じたという共同不法行為の関係があると主張するが、本件聴取に関する事実関係は前記認定のとおりであって、右事実関係から原告の右主張事実を推認することは到底できず、本件全証拠によるも、原告の右主張を裏付けることはできない。また、原告は、石倉事務官が被告渡部の各司法書士法違反を教唆し、又は幇助したとも主張するが、被告渡部に司法書士法違反の事実がないことは、前記認定のとおりであって、原告の右主張も失当である。
2 更に、原告は、石倉事務官は入手できる筈のない本件領収書の原本又は写しを入手して本件聴取を行った違法があると主張するが、前記認定のとおり、石倉事務官は、原告が保土ヶ谷税務署に提出した「譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面のメモ等を手がかりとして本件聴取を行ったものと認められ、本件領収書の原本又は写しを入手した事実を認めるべき証拠はないから、原告の右の主張も理由がない。
六 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 慶田康男 裁判官 千川原則雄 裁判官 高橋伸幸)
別紙 <省略>
(全部の枚数 三枚のうち 一枚)
<省略>
(全部の枚数 三枚のうち 二枚)
<省略>
(全部の枚数 三枚のうち 三枚)